Stanford MS&E 435 第 1 回

アプールヴ・アグラワル / Apoorv Agrawal · 00:33 「AI のお金はどこにある?」

Stanford 大学のゼミ MS&E 435 第 1 回 (2026/04/09 公開、 約 40 分)。 講師による初回オリエンテーション

過去のテック・スーパーサイクル (インターネット 25 年前、 モバイル 20 年前、 クラウド 10 年前) では、 設備投資した側がいずれユーザーから回収する 「正三角形」 の経済構造で利益が上に流れた。 ところが AI ではそれが逆さまや — 半導体層 (NVIDIA など) の粗利マージンが約 75%、 アプリケーション層は 0〜30% に過密。 これがコース全体を貫くテーマ。

講師は アプールヴ・アグラワル (Apoorv Agrawal) — Altimeter Capital のパートナーで、 OpenAI への大型投資を主導した投資家。 Stanford GSB 卒、 元 Palantir エンジニア。 9 週間にわたるゼミでは半導体・電力・モデル・推論・アプリの各層から実務家ゲストを 1 名ずつ招き、 「あなたの層で誰が支配的で、 いつまで続くのか? 価格圧縮ベクトルは?」 という同じ質問を当てていく構成。

「ソフトウェアが世界を飲み込んだ」 (マーク・アンドリーセン、 2011) は、 ソフトウェアの限界コストがゼロに近かったから 80〜90% の粗利マージンが成立した。 でも AI アプリは違う — ユーザーが 1 人増えるたびに GPU を消費する。 数十億ドル規模の収益でも赤字、 という事業が普通に出てくる。 物理法則そのものが違う、 という認識から始める。

もう一つの鍵が CapEx / Revenue のタイミング不一致。 半導体の建設は 5〜6 年スパンの先行投資、 アプリの収益は今この瞬間の話。 だから三角形の下半分は 「鉄道敷設」 のような周期性を持つ。 過去のモバイル・スーパーサイクルでも、 最初の局面で資本支出系企業の時価総額が膨らみ、 やがて巡航速度に落ち着いた。 「我々は今、 その最初の局面にいる」 という時代認識。

個人的に面白かった点

「5 年後、 みんなが君に聞くやろ、 『これが来るのを見たか?』 って」 (04:36)

アプールヴが学生に向けて、 このコースを取る動機を語る場面。 「ChatGPT が出た瞬間、 プレートが形成され粘土が固まろうとしていた瞬間、 君はそこにおった、 と言えるようになりたいやろ」 と言う。 この後 9 週間、 ゲストとなる各社のリーダーは、 半年〜数年後に振り返ったとき 「あの瞬間に何を考えていたか」 の一次情報になる。 講座の存在意義そのものを最初の 5 分で言い切る、 投資家らしい時間感覚。

AWS は着工から完全移行まで 8 年 (09:48)

AWS は 2004 年スタート、 最初の顧客 Netflix を獲得したのは 2010 年、 Amazon 自身が AWS に完全移行したのは 2012 年。 着工から 8 年。 当時の決算報告で最大の議論は 「Amazon は倒産するのか?」 やった。 設備投資の重さに対して回収が見えない期間、 市場は不安になる。 今の 「ハイパースケーラー 5 社が 6,500 億ドルを投じている」 という構図に対して、 同じパターンが繰り返されるかもしれん、 という時間軸の参照点。

NVIDIA フリートの 40% は推論、 60% はトレーニング (18:38)

NVIDIA 決算報告で最も注目される数字の一つ。 推論ワークロードはトレーニングと違って予測しづらく、 バースト的 (人間が起きてる時間に集中、 クリスマス・感謝祭は谷)。 ただし 「いずれエージェントが 24/365 でトークンを消費する世界になれば、 もっと予測しづらくなる」 という見立て。 推論層が今後の拡大の主戦場で、 ASIC・カスタムチップ勢が NVIDIA に挑む構図が、 数字から立ち上がってくる。

動画の構成

出典

Class #1 | MS&E 435: Economics of the AI Supercycle Stanford University Spring '26 Apoorv Agrawal

講演者プロフィール: アプールヴ・アグラワル / Apoorv Agrawal